ロジャースのクライアント中心カウンセリングの受け答えのしかたプラス、もう少し方向性や目的が決まっている(すなわち、クライアントの話をただ聞いて受容するのではなくて、禁煙を勧めるという目的性はあると)。 まぁ、おうむ返しとか要約とかの技とともに、クライアントのことばのなかの現状維持的なことばと変化にむけたことばを聞き取りながら変化に向けたことばを上手に拾ってフィードバックして、変化に動機づけていく、みたいなことか。
という理解をしていて、まぁそれはたぶんそうなのだろうけれど、もう少し正確に言うと、クライアント中心療法的なものと、認知行動療法的なものとをうまく折衷しつつ、誰でもできる技法の部分だけ取り出して普及版にした、というかんじ。で、その際に、クライアント中心療法から引き継いだものと失ったもの、認知行動療法から引き継いだものと失ったもの、というふうに考えると、表面上の「おうむ返し」とか「要約」とかの技法はクライアント中心療法から引き継いでいるのだけれど、それらの技法を最終的な方向性や目的性に向けて組織して行動変容を起こさせるために使おうというのだから、根っこの部分は(認知)行動療法と変わらんな、というかんじ。そのあたり、このテキストではよくも悪くもよく見えて、というのも、動機付け面接のスピリッツのうち「コンパッション」という精神を説明するときに、これがなければ動機付け面接は「相手に必要のないものを売りつけるセールスのトークとおなじ」になってしまう、ということを言ってる。だからコンパッションが大事なんだよ、と言っているわけだけれど、まぁ、だからようするにこの技術論そのものとしては、相手の行動を操作する技術論なんだよね、ということである。まぁそのへんがクリアに見えたのは、この本を読んでよかったところ。まぁ、前の本を読んだらそんな印象は感じなかったわけで、そのあたりはやはり、にじみ出る上から感を隠さないお医者さんが書いていることが原因なんじゃないかなと思う。あとまたおもしろかったのは、最後の章で「面接を客観的に評価する」という「MITI:動機付け面接治療整合性尺度」というツールを紹介していること。ようするに面接のコミュニケーションを得点化して、どれだけ動機付け面接度が高いかを客観的に評価すると。そういうのがやりたいのだなあと。