通勤電車で読む『「若者の読書離れ」というウソ』。これはおもしろい&良い本&勉強になった。

いまどきの若者に本を読ますにはどうすればいいのか的なことはまぁ課題なのだけれど、いやまてよ、読んでるよ?いまどきの若者の実態がみえてへんのちゃう? という本。
さいしょに、全国学図書館協議会「学校読書調査」を中心にデータを見てみると、たしかに、2000年代以降、小中学生の読書率・平均読書冊数はV字回復している、などなどの実態を示している。「朝読」の時間とかが功を奏してるよと。ただ、高校や大人になったら結局読書をするのは半分ぐらいの人だけになるよと。それはおおまかには昔から変わらんことだよと。
そして、じゃあ具体的に小中高生は何を読んでるのかというと、「どうせラノベでしょう?」というとそれはもう古くて、いまどきはラノベというジャンルは大人もターゲットにし始めたことでむしろ小中学生からの人気は落ちてきてるよと。で、(そもそも年寄りの目からはいろんなジャンルがぜんぶ一緒くたに見えているのだけれど)じゃあほかにどんな本が実際に読まれているのか、というのを、じっさいに書名を上げながら紹介してるのが本書のメインのぶぶん。
で、まず内容として「中高生の3大ニーズ」として

1 正負両方に感情を揺さぶる
2 思春期の自意識、反抗心、本音に訴える
3 読む前から得られる感情がわかり、読みやすい

をあげて、それらを得やすい「4つの型」として

1 自意識+どんでん返し+真情爆発
2 子どもが大人に勝つ
3 デスゲーム、サバイバル、脱出ゲーム
4 「余命もの(死亡確定ロマンス)」と「死者との再会・交流」

をあげている。
で、「学校読書調査」では、じっさいに読まれている本のランキングが出るそうで、
それらを、

1 児童文学
2 ライトノベル
3 ボカロ小説
4 一般文芸
5 短編集
6 ノンフィクション
7 エッセイ

というカテゴリーべつに、それぞれ具体的な作品をあげながらそれらが「3大ニーズ」「4つの型」にあてはまりつつうまく(小)中高生に刺さっているようすを描いている。
↓これは著者の人の記事。
gendai.media
おもしろいのは、こういうじっさいに読まれている本が、わたくしたちがイメージしている本たちとはズレていることで、
また、ほとんどの文学賞の受賞作もかんけいなくて、『このミス』みたいなランキングもかんけいなくて、
ただ「本屋大賞」の受賞作はけっこう中高生のランキングに出てくるのだそうだ。
作家とか書評家とか愛好家とかの大人が投票するやつは中高生には刺さらないそうで、だけど「本屋大賞」は書店員の人が売りたい本として投票していて、書店員の人たちの感覚は中高生に刺さるツボをとらえてるらしいのである。おもしろい。