通勤電車で読む『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』。居るのはつらいよの人の父親殺しワナビーの臨床心理エッセイ。

『居るのはつらいよ』でおなじみの著者の新刊。
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臨床心理のジャンルで、面白い、売れるかんじのものが書けそうな人で、けっこう追っかけて読んでるのだった。で、「ユンギアン化したロジェリアン」批判をしていたり、まぁ、京大教育学部臨床心理の出身の著者には、ちょっと父親殺しの気配があるなあと見える。この本なんか、まず第1章で、「心の処方箋」というのが本屋さんに並んでてよく読まれてるということで自己啓発書なんかに言及してて、でもまぁそれだけでは限界があるよ、「心の補助線」が必要だよ、みたいに話が進む。いうまでもなく河合隼雄『こころの処方箋』という有名な本のことを言ってるのだろう。あからさまな父親殺し宣言なわけである。自分の臨床経験をもとに一般の悩める人たちが手に取ってちょっと癒されつつちょっとカウンセリングというものに興味を持つちょっといい話をちょっと笑わせたりちょっと泣かせたりしながら読みやすく通俗もいとわずわかりやすく書くのは俺だ、という宣言というか。これは頼もしいといえば頼もしいわけで、河合先生が一時期はたしていた巨大な役割の、跡目を継ごうという者が出てきたというわけである。なお、あとがきのところで社会学と臨床心理学をミックスする自分の新しい考え、などと書いている。まぁそのへんは聞かなかったことにして。