通勤電車で読んでた『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』。正義vs悪、絶体絶命からの逆襲、みたいな企業ガバナンス実録モノ。

HONZで見かけて、読んでみた。
honz.jp
書評にいわく、「巨大企業を舞台にした人間ドラマと、コーポレートガバナンスの教科書的要素が見事に両立したノンフィクション」ということで、なんか面白そうだなと思って読み始めたけれど、たしかに面白かった。テレビのCMでおなじみのLIXILでそんなことがおこっていたのかーというかんじ。書評によれば「簡単に言えば、創業家出身の潮田氏が、自らが招聘したプロ経営者であるLIXILグループ社長兼CEOの瀬戸欣哉氏のクビを切った一件」ということになる。で、本書の主人公はクビにされた瀬戸って人で、そりゃおかしいだろうってことで反撃に出て、まぁ日本の株主総会なんてなんだかんだで会社側が勝つにきまっているところにむけて、新しい取締役と自らのCEO復帰を株主提案する。「日本の企業社会では株主提案が勝利するケースはほとんどない…2019年には54件の株主提案がなされているが、わずか1件をのぞきすべて否決されている。実はこの1件が瀬戸氏による株主提案だった。瀬戸氏の勝利が奇跡的と称される由縁である」だそうな。でまぁそういう、絶体絶命からの大逆襲の痛快ノンフィクションなのだった。で、まぁ、これはたぶん著者の人の書きぶりもあると思うのだけれど、けっこうメリハリよく、正義vs悪、みたいな構図になっている。でまぁしかし、ふたりの名前が瀬戸と潮田なので、なんとなく読んでいて「あれ?どっちがどっちだっけ?」と思うし、本の最初のあたりで瀬戸氏の写真と潮田氏の写真がはいっているのだけれど、いかんせん両方ともおじさんなので、やはりどっちがどっちだか印象がぼやけてしまうというところはある。まぁしかし、敵味方双方にいいかんじの登場人物がぞろぞろ出てきて、TBSの日曜劇場になりそうなかんじのおもしろさなのだった。でまぁ、この本でガバナンスの勉強ができたかというと、そういえばたしかに近年、大学にもガバナンスということが言われているなあということは思い出された。まぁ、ここまで劇的に血で血を洗うような激闘がおこりそうなかんじはないので、本書で実感がわいたかというとそれはなかったけれど、こういう種類のことを言っているのだというのはよくわかったかな。
ところで、この手の企業実録モノ、そんなに読んでるわけではないのだけれど、たとえば東大大学院西洋政治思想史出身でフッサールを論じた論文もある将来を嘱望されてた男が日本政治思想史丸山ゼミに来ていた後輩イラン人女子と結婚するためにイランに渡り東芝現地法人に採用されてみるみる頭角を現し世界初のラップトップコンピュータを開発してパソコン事業を成功させ、東芝を再興、社長に上り詰めて米ウエスティングハウス社を買収し原子力事業に東芝の未来を掛けたものの失敗、東芝壊滅の戦犯として追われる、という『テヘランから来た男』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20171208/p1)とか、リクルートという戦闘的組織をつくって高度経済成長の波を捉えてぐんぐん成長していくも、徐々に歯車が狂い孤立を深めてバブルの中で没落していく江副って人を描いた『起業の天才!』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2021/04/18/131741)とか、こういうのはやはり読んでて面白い。まぁ、それらの本にある、主人公のやばい狂気そして没落、みたいなものが本書にはちょっとなくて、正義の主人公が絶体絶命のピンチから逆転して悪を倒すみたいなお話にはなってるね。