通勤電車で読んでた『イーロン・マスク』。これはおもしろかった。

HONZの記事(https://honz.jp/articles/-/54004)がよさげだったので通勤電車で読んでて、あと土曜日にずっと読んでた。で、読んでみたらなるほどおもしろかった。ザッカーバーグhttps://k-i-t.hatenablog.com/entry/20131228/p1 https://k-i-t.hatenablog.com/entries/2013/07/12#p1)やジョブズhttps://k-i-t.hatenablog.com/entry/20161113/p1 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2019/10/06/231318 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20150112/p2 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20150613/p1 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20160304/p1)よりも面白かったし、ベゾス(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2022/02/18/180135)の本よりは全然面白かったし、ビズ・ストーン(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20141129/p2)の本と逆ベクトルで面白かった。えーとつまり、Twitterが立ち上がる時の青春ぽいおはなしと、Twitterを呑み込んだ得体のしれない怪物みたいな男がそれまでにいろいろやってきたことのはなしというぐあいに。で、これ、公式の伝記ということで、本人に2年余りつきまとって取材したり、周辺の人たちに取材したりして、マスクが生まれる前から現在に至るまで、ぎっしりと二巻本で描き出している。で、このイーロンという人がまぁむちゃくちゃな性格でありそしてテスラやらスペースXやらでたしかにすごいことを成し遂げ、そしてあの愛すべきポンコツTwitterを呑み込んで、いったいなにをしようとしているのか。まぁ本書を読んだら、まぁあのぐらいの混乱にはなるわね、というのはまぁわかる。やってることが結局のところ正しいことなのかというと、あんまりそうは思えない、というのも、本書で書かれていることにいちおうよるならば、イーロンという人はべつに金を儲けたくてやってるわけではなくて、人類のためにやってる(たとえば地球が滅亡するときのために火星に移住できるようにならねばといってロケット会社を立ち上げる等)わけで、そこのところの本気ぐあいがたとえばベゾスとちがうところなわけだけれど、じゃあ地球が滅亡するときのために火星に移住することは正しいですかどうですかといわれたら、うーんそれはどうかなあとなるわけじゃないですか。しかしなにはともあれそれでロケット会社のすごいやつを作ってしまったんだからたいしたものだ等々。しかししかしそのために周りの人たちや技術者や仕事をしている人たちをめちゃめちゃに追い込んでボロボロになるまで働かせる、少しでも緩んだものは即座にクビにする、みたいなことを絶え間なく繰り返してるんだとしたら、まぁそんな事必要かなぁ、火星行かないし…という気にもなる。そしてまたしかし、じゃあ、この本はめちゃくちゃな狂信的暴君の怪物的なおはなしってことなのかというと、まぁそうでありつつ同時に、なんかイーロンという人は憎めないかんじがあるし、泣かせるところもあるし、まぁねぇ…という気にもなるわけで、まぁだからつまり、おもしろい伝記なのだった。
あとそうだな、イーロンという人がツイッターを買収した動機が、これまた人類のためで、言論の自由を守りたいみたいな気持ちからだったようなのだけれど、どうやらそこで「言論の自由」の敵、とイメージされているのが、左派的・「ポリコレ」的・エスタブリッシュメント的なものだというのが、まぁ、ふーんと思ったというか、まぁそれはたしかに近年の世の中でそのようなイメージになってるというのはなんとなくわかっていたし、まぁようするにいわゆる「トランプ現象」というのがそういう風潮のなかでおこったというのはわかるし、だからツイッターがトランプのアカウントを凍結したのは「言論の自由」への攻撃ということになって、マスクがツイッターを買収して多様性を重んじる企業文化ごと破壊して自分好みのものに作り替えたくなっているのは、話としては合っている(これ読んで、まぁいちおうわかる通り、マスクはまるきりめちゃくちゃなことをしようとしているわけでも、ツイッターをヘイト無法地帯にしようとしているわけでもないというのだけれど)。まぁしかし、だからつまり、こりゃなかなかたいへんだなぁと思ったしだい。